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あれこれ。

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タイトル以上でも以下でもない、でも胸の内に何かが残る『女の子が死ぬ話』

女の子が死ぬ話 (アクションコミックス)

女の子が死ぬ話 (アクションコミックス)

 

 

 このマンガの半分以上は、「」 によってできている。

 タイトルを読んで字の如く、“女の子が死ぬ話”。それ以上でも、それ以下でもない。

 

 けれど、読み終えた後には何かが残る。口にした食べ物の後味に首を傾げるような、歯と歯の間に何かが挟まっているような。じわじわと効いてくる毒のようなもので、下手な感動モノの作品よりも、響いてくる。そんなマンガ。

 

 

奇跡なんて起こらないし、人は簡単に死ぬ

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柳本光晴『女の子が死ぬ話』(双葉社)第1話より

 

 1ページ目から、これである。もっとも、表紙も飾っている彼女は主人公ではない。

 

 物語の前半は、この残りの“半年”を共にすることになる、友人の視点から展開していくことになる。

 

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本文 第1話より

 

 高身長、色黒、体育会系といった自分の容姿にコンプレックスを抱いている、彼女の方が主人公。でもでも、読んでみればわかるけど、この娘がすっごくかわいいのです。女の子に憧れて、褒められると素直に受け止められなくて、あうあう照れちゃう感じ。ジャスティス。

 

 この作品は、7話構成。主なキャラクターは、この2人の女の子と、もう1人。余命幾ばくもない“彼女”の幼なじみである男子が加わり、ちょっとした三角関係の様相も呈しつつ、物語が進んでいきます。

 

 ところがどっこい。

 

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本文 第4話より

 

 彼女は、びっくりするほど、あっさり死ぬ。

 

 ページ数的には、ちょうど1冊の半分といったところ。日々を3人で楽しく過ごすことで病状の進行が遅れるとか、最期まで病室で手を取り支え合っていくだとか、そんな感動的な描写なぞ一切なく、友人である彼女に対しては死が近いことすら伝えられることなく、簡単に。

 

 病気や特殊な設定などによって設けられた「タイムリミット」によって、限られた時を共に過ごしていくような作品は数多いし、泣ける。けれど本作は、まったくもってそのような「過程」を示すことなく、大きな盛り上がりもなく、さっぱりと消えて亡くなる。

 

 奇跡も、魔法も、ないんだよ。

 

“遺された”者と、“遺す”者の物語

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本文 第5話より

 

 友人の「死」を迎えて続く後半は、遺された2人に焦点が当てられる。高校生活を過ごす中で互いに話し、少しずつ気持ちを整理し、2年後の卒業を迎え、さらに大人になって――というところまでを、途中からは駆け足で追いかける。

 

 大切な人がいなくなった「その後」の物語。どことなく現実味を覚えて、じわじわくる感じが否めない。結末としては無難というか、しっくりくる形には収まるのですが。ああ、これからも人生は続いていくんだなあ――的な。

 

 ところがぎっちょん。まだ終わらない。

 一転して、物語は「死んだ彼女」に委ねられる。

 

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本文 第5話より

 

 終わったと見せかけて、回想編。

 しかも、言っちゃなんだけど、てっきり「舞台装置」でしかないと思っていた“死んだ女の子”の視点でござる。ごめんなさい。びっくりした。

 

 本の終盤で描かれるのは、“死んだ女の子”と幼なじみの男子の間の物語。前半には見えなかった、見せなかった関係性がここにきてはっきりと提示されたことで、本作中で最も「じわじわ」「もにょもにょ」とするのがこの部分。ズルい。

 

 この『女の子が死ぬ話』という1冊のマンガは、何と言っても物語展開の「構成」が独特でうまいな、と感じました。

 言ってしまえば、タイトル通り。それ以上でもそれ以下でもない話なのに、うまい具合に時系列と視点をいじることによって、読者の心情をあっちゃこっちゃへ揺さぶってくる感じ。悔しい。でも、おもしろい。

 

 電子書籍版にも「カバー裏」部分のマンガが収録されており、しかもちゃんとそれをラストに持ってきているのがありがたい。おかげで、読み終えた余韻としてはぜんぜん悪くない。読んでみて、良かったと思える読後感でした。

 

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本文 第5話より

 

 一人の人間の「死」から炙りだされる、複数の視点。

 メインの3人だけでなく、親や教師の心情もそれとなく示されているのが、個人的には好きなところです。

 

 

女の子が死ぬ話 (アクションコミックス)

女の子が死ぬ話 (アクションコミックス)