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“終わってしまった物語”のアフターストーリー/『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』

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[スニーカー文庫公式サイト]ザ・スニーカーWEB

 

 なんとはなしに気になっていたライトノベル、『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』を読み終えました。ラノベの1巻としては、これまでになかった不思議な読後感。良い意味で。ガツン!と印象強く残るでもなく、ススーッと自然に読み流すでもなく、後でジワジワ効いてくる「毒」のような。

 

 

“終わってしまった物語”のアフターストーリー

《人間》は規格外の《獣》に蹂躙され、滅びた。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年ヴィレムを除いて。《人間》に代わり《獣》を倒しうるのは、《聖剣》(カリヨン)と、それを扱う妖精兵のみ。戦いののち、《聖剣》は再利用されるが、力を使い果たした妖精兵たちは死んでゆく──。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、儚くも輝ける日々。

[スニーカー文庫公式サイト]ザ・スニーカーWEB

 

 あらすじを読んで、まず、登場人物はここに記されているもので全員かと思いこんだ。滅亡した世界で主人公とチビッコ妖精たちがキャッキャウフフしながら外敵と戦う、サバイバル的なストーリーを勝手に想像しておりました。あるいは、『人類は衰退しました』的な世界観かと。いずれにせよ、見当違いだった自分が滑稽でござる。

 滅びたのはあくまで「人間」族であり、他の諸々の種族は生き延びて社会を構成し、そこそこ健全に暮らしている。ただ一人、イレギュラーとして“生き残ってしまった人間”こそが、本作品の主人公、ヴィレムである、と。

 

 本作は一口に言えば、「終わってしまった物語」だ。人間世界に現れた規格外の脅威と戦うべく各地から「勇者」が召集され、彼らもまた超常的な技術をもって立ち向かった。そこには無数の人間の物語があり、ヴィレム自身もまた、守りたいもののために戦地に赴く戦士だった。

 が、人類は滅亡した。本来なら語られるべき物語はここで語られず、バッドエンドとしての結末が示されるのみ。人間の歴史はそこで途切れ、本作はその500年後の世界が舞台となっている。化け物の蠢く荒廃した地上を離れ、空を浮かぶ浮遊島群で文化・生活を形成する、“人外”の多種族たち。そこに一人、滅びたはずの人間の姿。

 

なぜ、彼女たちと一緒に死ぬことができなかったのか。あるいは。どうして、この世界に目を覚ましてすぐに自分の命を絶たなかったのか。いまこうして生きているということは、かつての約束のすべてを裏切り続けるということではないのか。

 

 言うなれば、本作品はバッドエンドを迎えた物語の「アフターストーリー」として読むことができなくもない。生き延びてしまった脇役が後悔と懺悔と孤独の中、語り部として「新世界」を見て回るような。――実際は、そんな話ではないのだけれど。

 

「2週目」として別の役割を演じる

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枯野瑛『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』(角川スニーカー文庫)

 

 戦士として戦い、バッドエンドを迎え、その後の世界に“蘇った”主人公。身体はボロボロ、生きる理由も目的も見出だせず、残されたものと言えば、大きな後悔と旧世界の記憶のみ。戦えなくなった彼は、本来の物語であれば「脇役」が務めるであろう立ち位置で、戦いに身を投じる妖精を見守ることになる。

 

 一般的なお話で言えば「脇役」であるところの役割を、本作品では主人公が丸ごと担っているように見えるんですよ。戦いの技を教え、サポートし、心構えを説き、帰ってくる理由を与える。決して、“俺TUEEEE”ではない。

 おなじみの「俺、帰ってきたら〜」の台詞を、プロローグでは“言う側”だったのが、本書の後半では“言われる側”になっているという逆転現象。それが、読んでいて非常におもしろかった。最後の地の文なんてアレっすよ。女子力がビンビンに溢れ出ていて、思わずクスっときましたよ。いや、本来はそういうシーンじゃないのだろうけど。

 

 いわゆる「セカイ系」に分類されるかはわからないが、退廃的な世界の中、終わってしまった物語の「2週目」を歩み始めたかのような展開に、なぜだか心震わされた。その終わり方も、1巻にしては「え!?そこで終わり!?」という割と異色な締め方だったので、続きが気になってならない。

 2巻も購入済みなので、引き続き読んでまいります。あと関係ないけど、口調と性格のせいかヴィレムのビジュアルがひげ面のイケメンなおっさんで脳内再生されて、挿絵の違和感がすごい。その場合、もしもアニメ化したら絵面が酷いことになりそうなので、こっちで問題はないのだけれど。

 

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (角川スニーカー文庫)
 

 

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