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“終わってしまった日常”を想い生きる『がっこうぐらし!』1〜5巻

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『がっこうぐらし!』1巻1話「はじまり」【(C) Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社】

 

※ネタバレあり

 

各所で「久しぶりのハートフルボッコアニメだー!」だの「ぞんぞんびより」だのと話題のアニメ『がっこうぐらし!』

 

その先の展開が気になって仕方なかったので、Kindleストアのポイント還元セールに合わせて全巻購入してしまった。興奮、衝撃、悲痛、感動――などなど、非常に心がぴょんぴょんする物語でした(白目)

 

1巻からずっと明らかになっていない設定や、ちらほらと散見される伏線の存在も気にかかり、ますます今後が楽しみな作品でござる。

 

 

“終わってしまった日常”にて

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『がっこうぐらし!』1巻4話「せんせい」【(C) Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社】

 

5巻まで読んだあとだと、辛い一コマ。

めぐねえは天使。じゃなかった、先生。

 

『まんがタイムきらら』系列と言えば、ゆるふわなキャラクターとストーリーが展開される、いわゆる「日常系」の作品を数多く送り出している雑誌でもあり、本作もその系統かと思いきや、そんなことはなかった。大丈夫? 『まんがタイムきららフォワード』だよ?

 

かわいらしい絵柄とは裏腹に、序盤から「ゾンビアポカリプスもの」という世界観が明らかになった状態で、物語は展開されていく。

 

外は地獄。閉鎖された学校の中で生き残った3人(+1人)の必死なサバイバル――かと思いきや、「まだ日常を生きている」と幻視している、ゆきの存在によって思いのほか穏やかな生活が営まれている様子。しかしそれも、むしろ失われてしまった「日常」の輝かしさをより際立たせているようにも見えて、どこか切ない。

 

長期連載作品ともなれば、どこかで「箸休め」的な本筋とは関係ない話数があってもおかしくはないと思う。しかし本作は5巻現在、そういった無駄らしい無駄は一切排除し、スローペースながらも淡々と物語が進んでいるような印象を受ける。

 

ゆきが示した「日常=学校行事」をこなしながら、「非日常」も着実にゴールへ向かって歩みを続けているような。新たな事実が明らかになり、キャラクターの内面が掘り下げられ、“終わりなき日常”を想いながらも変化を受け入れ前へ進む、王道作品でございました。

 

世界設定と伏線と

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『がっこうぐらし!』3巻巻末【(C) Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社】

 

何より読んでいて驚かされたのが、巻末に示されている設定資料の存在。まるで「おまけですよー」と言わんばかりにさらっと載せられているけれど、1巻の時点で世界設定の根幹を成しているんじゃないかと思しき内容になっており、気になって仕方がない。

 

直接的な「マニュアル」や「手記」は言うに及ばず、「学校説明」に記されている伝承、校歌の詞あたりは、おそらく本作の“元凶”とも関わるポイントになってくるんじゃないかと。ショッピングモールでもおばあちゃんが意味深なことを言っていたし、さすがにミスリードということはない……よね?

 

というのも、さっきも書いたように現時点で“無駄らしい無駄”がないため。一コマ一コマが丁寧に書き込まれている印象を受けるし、読み返してみても、序盤の意味深な描写には“意味”があった。それゆえに、設定資料も本編に関わる判断材料として、今後“意味”を持ってきても不思議ではない

 

とりあえず、5巻の「結構手冷たいね」発言が不安材料すぎるので、早く続刊を……。

 

「目」で語る表情変化

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『がっこうぐらし!』5巻28話「らくえん」【(C) Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社】

 

コミックを読む前、カラーイラストの表紙を見るかぎりでは、「萌え系」のかわいらしい絵柄という印象だった。日常パートでも小さなコマではたびたびキャラクターがデフォルメ化されており、慣れ親しんだイラストとデザイン……というような。

 

しかし、物語が進むに従って振りかかる危難や悲劇の中で目まぐるしく移り変わる表情を見ていると、そのギャップのすさまじさに驚いた。極端な“顔芸”レベルの作画にはならないものの、普段のほんわかかわゆい表情との格差がはっきりと描かれており、印象的。

 

特に個人的に好きなのが、キャラクター各々の「目」の作画。楽しい学校生活に目をまあるく見開くゆきに、その様子を優しげな細い視線で見守るりーさん、活発に瞳を光らせるくるみに、振り回されながらも穏やかで温かな目線のみーくん。

 

それが非日常へと反転すれば、絶望、狂乱、悲嘆、安堵、決意など多種多彩に感情が振りきられ、ストーリー展開をより一層明瞭に、魅力的に彩っているように読むことができた。特に、いざ行動という直前の決意を示す一コマでは、その「目」が象徴的に描かれているように見える。

 

個人の印象にすぎませんが、自分としてはすっごく好きな絵柄でございます。

 

「卒業」のその先へ

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『がっこうぐらし!』5巻30話「そつぎょう」【(C) Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社】

 

読み始めた当初は、「いったいどういった方向に物語が進むんだ……」とまったく先が想像できなかった作品ではあるものの、5巻で「卒業」ということで、とりあえずは一段落。

 

進路を「進学」へと決めた先でどのような出会いがあり、ストーリーが展開されていくのか。少しずつ物語の核心に近づいているようには見えるけれど、ヘリのパイロットの挙動といい、くるみの身体に対する意味深なコマの多さといい、まだまだどう転ぶかわからない。

 

特に気にかかるのが、1巻末尾の資料で示されていた、過去に人口が半減した「男土の夜」の記述。これ、“男土”っていう地名もなんだか関係がありそうな気がするんだけど、考えすぎじゃろうか……。いくらでも推測ができそうなので、なんとも言えませんが。

 

何はともあれ、最新刊の発売を待ちましょう!

 

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