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古参ボカロファンの「目」に映る『カゲロウプロジェクト』

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「メカクシティアクターズ」公式サイトより

 

 賛否両論のまま終わった印象の強い、アニメ『メカクシティアクターズ』

 

 じん(自然の敵P)さん制作による楽曲群、『カゲロウプロジェクト』から派生したアニメ企画であり、発表から1年半、満を持しての映像化でした。

 

 (仮)時代からのニコニコ動画ユーザーとして、ボーカロイド系の動画も「みくみくにしてあげる♪」の頃から追いかけていた僕ですが、正直なところ、『カゲプロ』に関してはコアなファンではありません。

 

 じんさんの発表した作品の中で、好きな楽曲はいくつかあります。しかし、いわゆる『カゲプロ』の一連の作品全てを網羅しているわけではなく、あくまで自分が好きなのはひとつの「楽曲」としての評価のみ。別に、嫌いというわけではないのですが。

 

 そんな、中途半端に手を出しているに過ぎない僕。ファンから見れば「にわか」と罵られ、アンチからすれば「ミーハー」などと突っ込まれるのかもしれない。

 

 そんな曖昧な位置にいる自分なりの視点から、『カゲロウプロジェクト』について再考してみようと思います。

 

 

『カゲロウプロジェクト』とは?

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『カゲロウデイズ』1(MFコミックス ジーンシリーズ)/佐藤 まひろ、じん(自然の敵P)

 

 そもそも、『カゲロウプロジェクト』ってなに?

 

『 カゲロウプロジェクト 』 とは、ボカロPである じん(自然の敵P) の関連楽曲群の総称である。

 

8月14日と8月15日の、目も眩むような真夏日の物語である。

ある街で起きた一つの事件を中心にして、登場人物の様々な視点を取り上げていくストーリー構成をしている。

全ての関連楽曲が繋がっており、謎が「謎」を呼ぶ展開となっている。

また、楽曲には全て 「目を~~する話」 とサブタイトルがついている。(例:目を隠す話、目を奪う話)

登場人物の中にも「目」に関する力を持つ者がおり、 ストーリーの大きな要素の一つとなっている。

カゲロウプロジェクトとは - ニコニコ大百科

 

 と、まあこの通り。あくまで、原作は「楽曲群」であるらしい、という点がポイント。他にも、小説と漫画が現在も続いており、主に中学・高校生の間で大人気のコンテンツ。そして、冒頭の『メカクシティアクターズ』が、そのアニメ企画ということです。

 

 

最初の一歩は「カゲロウデイズ」

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【初音ミク】カゲロウデイズ【オリジナルPV】 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

 僕が、じん(自然の敵P)さんの作品を知るきっかけとなったのは、第3作目にして、『カゲロウプロジェクト』の第3話、「カゲロウデイズ」

 

 『初音ミク』のソフト発売当初、2007年晩夏からそのカルチャーにハマり、しばらくは毎日、欠かさずランキングをチェックしていました。

 がしかし、2011年ともなれば、もうボカロ動画も飽和状態。有名Pの作品を追いかけるのが精一杯で、若干のマンネリ感を覚えていた頃でした。

 

 

 こちらの図で言えば、有名どころを全て確実にチェックしていたのは、ダブラリ世代まで。以降は、元から好きだった作者さんと、気になった作品くらいしか追っておりませんでした。もうね、広がりすぎてね、いっぱいいっぱい。

 

 そんな中、ふと目に入ったのが、「カゲロウデイズ」。キャッチーなメロディと、独特の世界観に魅了されました。

 当時はアニメ『STEINS;GATE』*1が放送中だったこともあり、「シュタゲのパクリ」なんてコメントも散見された覚えがあるけれど。ループモノなんて今や珍しくもなんともないもんね……。

 

 

興味を持つまで2年かかった

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【IA】夜咄ディセイブ【オリジナルMV】 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

 ところがどっこい。「カゲロウデイズ」を聴いて、ハマったはいいけれど、僕の場合は後が続きませんでした。じんさんのマイリストも確認して、過去曲を聴いた覚えはあるのですが、いまいち惹かれなかった。ので、最初の出会いは、それでおしまい。

 

 再度、彼の作品に触れることとなったのは、1年半後の「夜咄ディセイブ」。たまたま耳にして、「あーいいなー」と思ったところ、よく見たら、じんさんでした、と。

 既に『カゲプロ』が話題となり、一部では大人気となっていることは知っていたけれど、特に興味も持つことはありませんでした。複数楽曲で物語を描くボカロPは他にいくらでもいますし、特段、『カゲプロ』には惹かれるような要素もなかったもので。

 

 

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【IA】オツキミリサイタル【オリジナルMV】 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

 で、ようやっと『カゲプロ』に興味を持つきっかけとなったのが、そのまた半年後の「オツキミリサイタル」によって。……え?ちちちちがうよ?べっ、べべべつにモモさんがあまりに可愛くて惚れたからじゃないよ!?わんにゃんぷーさんありがとう(昇天)

 

 

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【IA】オツキミリサイタル【オリジナルMV】 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

 全ては、モモさんにいろいろと奪われたせい……ではなく、動画中の、この場面によるもの。ここにきてようやく、「え?あ、なに?ちゃんと『カゲロウデイズ』と繋がってんの?」という点に思い至った。

 ついでに、『カゲプロ』の根っこの部分の設定、「目」の能力についても、ここで初めて知りました。いやだって、それまでに見た作品では、全くそんなことには言及されてなかったし、分かりやすい示唆もされていなかったんだもの。

 

 こうして、「カゲロウデイズ」から2年。

 ついに僕は、『カゲプロ』をこの「目」で知ることになったのでありました。

 

 

「楽曲」から見える『カゲプロ』

 「音楽」を手段として、ひとつの物語を展開していくという構図は、昔から見られるものです。

 

 コンセプトアルバムという視点で見れば、古くはビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』*2

 固有のキャラクターが登場し、アルバムを通してひとつの「物語」が語られる作品で言えば、最近だとSound Horizon*3が有名かしら。今や紅白歌手。「紅蓮の弓矢」*4の人、といった方が伝わりやすいかもしれません。

 

 『カゲロウプロジェクト』の作品を有する2枚のCD、『メカクシティデイズ』『メカクシティレコーズ』を見ると、後者のSound Horizonが奏でる「物語音楽」よりは、純粋なコンセプトアルバムの方に近いのではないでしょうか。

 CDのブックレット、あるいは、ニコニコ動画に投稿されている動画を見れば、そこには固有のキャラクターが存在していることは見て取れる。けれど、純粋な「歌謡曲」としてそれを聞けば、そこに「誰」がいるのかは分かりません。

 

 おそらく、何の知識もない人にこれらの楽曲を聞かせたところで、その繋がりや一貫性を推測することはできないと思います。

 タイトルや歌詞で名前が示されているキャラもいますが、それだけでは、一連の『カゲプロ』の物語を想像することは難しい。阿澄佳奈*5さん、花澤香菜*6さんによる「語り」のインストがあることで、「何かあるんだな」ということは分かると思うけれど。

 

 だからこそ、僕はずっと「目」のことを知りませんでした。「そんな設定あったの!?」と驚いたくらいですし。

 そういう意味で、歌謡曲としての『カゲプロ』は、原作というよりは「イメージソング」的な立ち位置であると考えた方が自然のように思えるのですが、どうでしょう。

 

 

話題性の高い、コミュニケーション手段としての『カゲプロ』

カゲロウデイズ -in a daze- (KCG文庫)

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 そんな『カゲプロ』も、いざその世界に飛び込んで見ると、おもしろい。

 

 とは言っても、僕はまだ小説版を3巻まで読んだだけに過ぎないので、その魅力を語ろうとしても無理があると思います。

 でも、「キャラ」の魅力は間違いなく大きい。それぞれに「イメージソング」があるということも手伝って、なかなかに個性的で、読んでいて楽しい。モモさんかわいい。

 

 ただし、1巻時点では、一般文芸の「小説」として読むのは辛いように感じました。主に、文章力的な意味で。表現が拙く、なんだかよく分からない言い回しも見られる。全体的な雰囲気としては、一昔前の「携帯小説」を読んでいるときの感覚と近しいものがあります。

 でも逆に言えば、まだまだ伸びしろがあるということ。事実、僕も2、3巻は夢中になって読みましたし、先の展開が非常に気になっています。頭からっぽにして読む分には、とても楽しめる、魅力的な物語だと思います。

 

 また、『カゲプロ』周辺を調べていて感じたのは、ひとつの「コンテンツ」として、とても優秀なんだろうなー、という点。

 元にある楽曲群は、ウェブ上で無料公開されているので、導入への敷居はこれ以上ないほどに低い。そしてCDを買えば、その世界観をさらに広げることができる。最近は、レンタル店でも大量にボカロ系のCDが置いてあるし、手に入れるのは簡単です。

 

 解釈が多様にできる音楽作品は、それはそれで話題になりますが、そこに小説と漫画が加わることによって、固定化されたひとつの解としての「物語」が提示され、コンテンツへより深く没入することができる。どんどん続刊が出ることで、話題にも事欠きません。

 さらに、ループモノであるがゆえの「ルート分岐」もまた、大きな魅力。楽曲、小説、漫画、アニメと、それぞれで別の展開へ向かう物語が語られるため、これまた、知れば知るほど楽しくなってくる。

 

 カラオケに行けば曲を歌えるし、pixivを見ればたくさんのファンアートを見ることができる。それらの多くは無料、または安価で済むものなので、学生にとっても身近なコンテンツとなりやすい。

 そりゃあ、中高生に人気が出ますよね。もちろん、それ自体がおもしろいから、というのも含めて。

 

 

 とりあえず僕は、小説の続きを読みます、はい。

 Kindleストアで安くなったら本気出す。

 

 

「カゲロウデイズ」で中学英単語が面白いほど覚えられる本

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