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期待を裏切らず、物語は予想外の新たな展開へ『僕だけがいない街』6巻

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

※ネタバレあり

 

衝撃の幕引きだった前巻ラストから、物語もクライマックス、「もしかすると6巻で最終巻なんじゃ……?」という予想も出ていた『僕だけがいない街』

 

続く6巻でも、驚きの展開が待っておりました。あれこれ予想したどの形にも物語は転ばず、予想を裏切られつつも「そうくるかー!!!!」と叫ばずにはいられない最新刊。まだ買っていない人は、こんな記事を読む前にまずそっちを読んでください。もったいない!

 

僕だけがいない街(6)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)

僕だけがいない街(6)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)

 

 

 

ついに明らかになった真犯人

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

5巻のラストでついに正体を現した、八代(先生)。“ひとりぼっち”だった雛月を救い、「これでもう安心だ」と一息ついた途端にラスボスの登場。どうなっちゃうのこれ……。

 

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

悟を「敵」だと認識した八代は、過去の自身の暗躍を楽しむように話し始め、「君はまるで未来でも見て来たかのようだ」と語りかける。

 

そして提案するのは、「この街の平和」と「僕の手による僕の為だけにある死」。悟の行動に敬意と賞賛を払いつつ、自分の欲望が満たされなかったことへの“代償行為”として、「僕のために死んでくれ」と言う。

 

計画を阻止されたことに対する恨みでも復讐でもなく、ただただ自身の欲求を満たすための「代償」。この言い回しは5巻、車内での“飴”のやり取りでも使われており、「“あの2006年”にはもう戻れないかもしれない」という悟の回想でも引用していた表現だ。

 

「等価交換の原則」ではないけれど、何かを得るためには何かを捨てなければいけないこの「代償という言葉は、次の八代の回想にもしつこいくらいに登場する。――となると、“ほぼ『プラマイ0』になる”という「再上映」もまた……と考えざるをえない。

 

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

そして、ヒーローは敗北する。

 

八代学の回想と「糸」の意味

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

初めての「殺人」は兄だった。少年・八代学の横暴な兄とその“代償行為”、抑え続けてきた衝動と婚約者の存在など印象的なエピソードが1話の中で収められているが、やはり気にかかるのは「糸」の存在だ。おなじみの小説『蜘蛛の糸』になぞらえて語られている「糸」を兄と婚約者の頭上に目にした彼は、迷わずにそれを断ち切っている。

 

この「糸」が何物であるかは想像するしかできないけれど、現状ではいずれも八代自身が“消すべき対象”に垂れているので、殺人衝動の理由付けとして可視化された幻であると受け取ることがひとつできそう。

 

ただしその場合は、自身にまで「糸」を幻視した説明ができない。「心の穴を埋めるため」とは言いつつも、自らその行いを「悪」として悔いている可能性もゼロではないが、純然たる殺意というよりは“代償行為”としてそれを行使している以上、どこかしっくりこない。

 

この「糸」の幻視が「再上映」同様の何らかの能力だとしたら、どことなく腑に落ちる点があるのも確か。1巻の駐車場での誘拐未遂において、悟母の頭上に垂れる“それ”を見たことでぎょっとして、すぐに行動を起こせたのかもしれない。

 

他にも、それまで自身が捕まらず“代償行為”を続けることができたのは、そうした「糸」の幻視による口封じがうまくいっていたから、とも説明できる。

 

「代償」「糸」。いずれも示唆的な単語ではあるけれど、今のところは何とも。ただ、この作品の終盤、もしかすると八代は自分に垂れた「糸」をも自ら断ち切ることで、一連の行いに幕を引くんじゃないかという想像も……。

 

ヒーローの覚醒と、集う仲間たち

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

主人公・悟の死によって、もしや他のキャラクター視点(ケンヤとか)の第2部が始まるんじゃないか……とも考えていたけれど、そうはならず。15年もの間、眠り続けていたヒーローは、いくつかの「代償」と引き換えに目を覚ます。

 

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三部けい『僕だけがいない街』6巻(KADOKAWA)より 

 

それは、「15年という時」「記憶」。正確には、“あの2006年”から「再上映」によって持ち越した記憶が失われており、「知らないはずの知識や思い出を持っている、体は大人、心は小学生の青年」という、別作品だとなんだかチートじみた設定のキャラクターに。

 

ただ、そうした現状を「閉ざされた扉」と比喩するくらいに大きな違和感を抱えており、次巻ではその「記憶」を如何にして取り戻すかに焦点が当てられるんじゃないかと。続きが楽しみでならないっす。

 

5巻冒頭(25話)で、もう“あの2006年”には戻れないような描写が入っていたけれど、実際のところ悟が行き着く先はどこなのかという不安もある。15年間を爆睡して過ごしたとは言え、殺人事件も起こらない平和な街で、死んでいたはずの仲間たちも存命のまま暮らしているという幸せっぷり。

 

でも、この「再上映」を乗り切った後には何が待っているのか。というか、そもそも「再上映」を引き起こすに至ったきっかけや、どの時間軸が“正規ルート”なのかもよくわからなくなってきた。

 

1巻を読み返すと“ボヤ騒ぎ”が最初の「再上映」だったようにも読めるけれど、他にもまだ明らかになっていない伏線っぽい要素がちらほら。アニメ化もめでたく決定したし、これからの展開にも期待大です。

 

僕だけがいない街(6)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)

僕だけがいない街(6)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)

 

 

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