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宮崎あおいさんの演技がすごかった!映画『バケモノの子』感想

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「バケモノの子」公式サイトより

 

細田守監督作品『バケモノの子』を観てきました。

 

『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(2009年)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)と、3年ごとに公開されている同監督の長編アニメーション映画。なんやかんやで『時かけ』以降の作品はスクリーンで観てきているので。

 

思っていた以上に直球ド真ん中の、“王道”かつ“エンターテイメント”。笑いあり涙ありの「アニメ映画」として、万人に勧められる作品だと思います。おもしろかった。

 

 

色彩豊かな異世界と、表情豊かな九太の声

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本作の世界は非常に色鮮やか。どこか灰色じみた渋谷の雑踏を彷徨う主人公は頼りなく、行き交う人々も影のよう。それゆえに、異世界“渋天街”に飛び込んだあとの色彩の変化はすさまじく、視覚的にむちゃくちゃ楽しめる。一口に言えば、“目が幸せ”

 

9才の少年の目線から見る異世界とその住人の姿は「異形」以外の何物でもなく、なんとなく『千と千尋の神隠し』を初めて観たときのワクワク感を思い出した。“師匠”・熊徹とその友人、バケモノ界のキャラクターもみんな魅力的で、すぐに作品世界に惹き込まれる。

 

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特に印象強かったのが、人間界の主人公・九太の声と演技。『おおかみこどもの雨と雪』では母親を演じきった宮崎あおいさんが、今回は9才の少年を担当している。PVの段階で「え?こんな声も出せるの?すごくね?」なんて思っていたけれど、マジですごかった。

 

なんというか、「声」に「表情」が乗っているようなイメージ。時に不安に、時に生意気に、時に直情的に、めっちゃ“男の子”している声。映像では熊徹ほどコロコロと顔色を変えないのに、声色の変化で細かな“表情”が伝わってきた。

 

熊徹を演じる役所広司さん、彼ら2人の師弟関係を見守る、多々良と百秋坊をそれぞれ演じる大泉洋さん、リリー・フランキーさんもキャラクターにハマっていて良かったのだけれど、その中でもやっぱり、宮崎さんの演技が特に光っていたように感じました。

 

徹底的に「師弟」あるいは「父子」を描いた物語

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個人的にちょっと意外に感じたのが、バケモノという“人外”が住む世界で成長した少年を軸にストーリーが展開するにも関わらず、「自分は人間なのかバケモノなのか」というアイデンティティの葛藤が割とあっさりしていた点。

 

劇中、8年ぶりに戻った人間界で再開した父親と、バケモノ界の熊徹たちとの狭間で揺れる描写はあったものの、それもたまたま出会ったJKこと楓ちゃんの圧倒的包容力によってすぐに解決を見てしまう格好。

 

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他の作品であれば、「自分は何者なんだぐぬぬ」と葛藤し周囲に多大なる迷惑をかけた挙句に自己肯定に至るのがよく見る展開だと思うんだけど、本作ではJKパワーと直後のゴタゴタの中で自然に結論が出ていたように見えた。あくまで“師弟”あるいは“父子”に尺が割かれており、すっきりと言えばすっきり。

 

むしろ、そういったアイデンティティ・コンプレックスに関しては別のキャラクターに依拠されており、文字どおり彼を“倒す”ことで解決を見たという点で言えば、確かに王道なのかもしれない。結末も納得。“その後”が気になる作品ではあるものの、それも良作の証かしら。

 

とりあえず、「JK」は強い。

 

2部作でも良かった説

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もう一点、観終わってふと思ったのが、「この作品、2部に分けてもおもしろいんじゃね……?」ということ。王道パターンと言えばそのまんまだけど、バケモノ界を舞台に成長を密に描いた幼少期編と、人間界での葛藤と事件に立ち向かう青年期編。

 

実際問題、作品構造としてはそんな感じにはなっていたものの、思っていた以上にあっさりと成長し、気づいたら偶然に人間界に帰還していたという展開の早さ。

 

まったく説明不足ということはなく、矛盾もなく、それはそういうものとして観ていたけれど、「もうちょっとバケモノ界でどうこうあっても良かったんじゃ……?」と思ってしまうのです。設定もキャラクターも魅力的なだけに。……と思うのは、欲張りかしら。

 

なにはともあれ、安定と信頼の細田守監督作品、おもしろかったです。8月31日まで国立新美術館で開催中の企画展 『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展 でも監督の作品がそれとなーく触れられていたので、興味のある方はぜひぜひ。

 

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