サークル「Wimdac Studio」さんのDeScienceシリーズ第4段『科学者の知りたい文字の話』を読みました。タイトルにもあるとおり、理系・科学に携わる人へ向けた「文字の使い方」を記した内容となっていますが、根っからの文系人間でも楽しく読めました。
「フォント」ってなんぞ?「文字」と「デザイン」を学ぶ
「あなたにとって、フォントとはなんでしょうか?」
こんな問いかけから始まる本書を一言で表すなら、「誰でもわかる、はじめての“フォント”学」といったところでしょうか。私たちの生活の中で当たり前に使われている「文字」を、「フォント」「書体」といった視点から捉え直す内容。
日本語を表す文字にはどのような種類があるのか。大きさや太さ、骨組みなど文字の「かたち」はどのように決定されているのか。「書体」にはどのような種類があるのか。まずはそのような、学校では教えてくれない、でも大切な「文字」の基本を勉強した上で、具体的な「使い方」の話へと展開していきます。
特に、私たちの使う「日本語」は独特の言語。それは単に情報を伝える道具ではなく、「文字や単語の単体ではなく、文として意味を織りなす」ということを前提として知る必要があります。
漢字、ひらがな、カタカナ、Alphabet。複数の種類の文字が混ざることで特有のリズム感を生み出すため、その使い方、バランス感覚はとても重要。基本的に漢字とひらがなが文中の8割を占めるため、漢字とひらがなをどのような文字にするかによって、文章の表現、読みやすさが大きく左右されることになります。
そう、これは「文字」を学ぶ本であると同時に、「デザイン」の基礎を知る内容でもあるのです。ウェブサイトにせよ、印刷物にせよ、街中の看板にせよ、普段はフォントを全く意識しないような人でも本書を読めば、似たフォントの小さな違いに気づけるようになる――かもしれません。
論文・プレゼンに使える、「文字」の選び方
本書の後半部分では、具体的な「文字の使い方」を学ぶことができます。ここで例示されているのは、論文とレポート、それにプレゼンテーション。この具体例ゆえに、“理系・科学者向け”というタイトル付けがされている格好ですね。もちろん、文系人間にも応用できます。
このようにQ&A形式で論文・プレゼンのチェックポイントをまとめて解説してくれているため、すぐにでも実践することができそうな方法論となっています。「大学じゃそんなの教えてくれなかったよ!」という内容が易しく明瞭に示されているので、本当にありがたい。
具体的には、どの書体を使うかという「選び方」に始まり、文字の組み方、文字同士の間隔、行の長さ・行間・揃え方、ページの余白部分、文字の並べ方(均等or調整)などなど、至れり尽くせりの解説文。これ、電子書籍化したらバカ売れするんじゃないです?
少しでもデザインを学んだことのある人にとっては当然の知識ばかりなのかもしれませんが、まったくの門外漢にとっては目からウロコの視点ばかり。すぐにでもブログデザインに反映できそうなテクニックもあり、最初から最後まで非常に興味深く読むことができました。
「フォント」や「書体」、それらを引っくるめた「文字」に少なからず関心のある人、もしくは少しでもプレゼン資料をわかりやすく見せたい人など、とても広い層に勧めることができる本だと思います。内容も簡潔明瞭でわかりやすいですし。これをきっかけに、最近話題になりつつある「フォント本」の類に手を出してみるのもいいかもしれませんね。
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サークル「Wimdac Studio」について
『DeScience』は、科学を人に"魅力的に"伝えるにはどうすればよいのか、"デザイン"をキーワードに突き詰めていくことを目的にした同人誌です。
「科学」を対象として、その「コミュニケーション」と「デザイン」を考えていく同人誌を発行している、サークル「Wimdac Studio」さん。サークル主催者さん自身が、日々の生活の中で体験した出来事、学んだ知識を発信し共有するべく、このシリーズを創刊したそうです。
既刊についても上記サイトで通信販売されているようなので、興味のある方はチェックしてみてくださいな。また、最新刊はCOMIC ZIN、とらのあなの店頭でも取り扱い中とのこと。機会があったら、ぜひ手に取ってみてください。おすすめですよ。